2024小学教科書改訂

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およそ10か月ぶりのブログです。

2023-2024年度に小学校の教科書が改訂されます。(中学校は1年おくれの2024-2025年度に改訂の予定)

教科書改訂年度について

小・中学校ともに、教科書は原則として4年おきに改訂されます。
さらに4年×3回=12年を節目として、大改訂がおこなわれる点も、小・中で同じです。
ちなみに小学校は2020年度、中学校は2021年度にこの大改訂がおこなわれました。

つまり今年度の改訂は「小改訂」にあたり、同一学年内での単元の移動がおもな改変の内容となります。

新しい教科書こそ手元にはまだありませんが、算数の準拠教材だけはすでに届いているので、気づいた点を覚え書き程度に記しておこうと思います。(学校の先生がたには 改訂を見越して 1年前に新しい教科書が事前に配布されます。)

本県の算数の教科書として永く採用されている「啓林館」

設問や数字の扱いが繊細で、どの子も着実に算数力を身につけることができる、非常に完成度の高い教科書といえます。

市販のテキストもこれまで数多く見てきましたが、この教科書に勝るような教材は存在しませんし、もっと言えばおよそ30年前にはこの教科書、すでにほぼ完成形だった記憶があります。

一方 塾の教材はといえば、教科書の大改訂年に合わせて、12年ごとに一から作り直しです。

ですから今回の小改訂は、教科書どおりに単元の順序を入れ替える作業と、書き溜めてあるメモを見ながら各設問の順序や数字などの手直しです。

地道な作業ではありますが、教材の完成度が高まっていくほど今後の授業がやり易くなるので、子どもたちの反応・表情を思い浮かべながらのこの作業は わりと苦になりません。

もちろん小改訂の年度とはいえ、修正箇所が多すぎる単元は一からやりなおすこともしばしば。

ここで、小5・小6の教材を手直しするなかで気になった点だけお話しします。

さわりだけ言ってしまうと、今回の改訂はいずれの学年もおそらくは「分数」が主役である印象です。

(あくまで目次表と準拠教材の内容からうかがい知ることのできる内容のみ。)

率直な感想ですから、このあたりから話し言葉にはご容赦。

まずは小5

おもな単元の移動はコマ数の都合でしょうが。

わり算と分数・小数・整数だけは わりと意図して、単元の位置が変更されたものと思われる。

わり算の商を分数で表したり、分数を小数や整数に変えたりする、分数に関連する単元です。

従来は

「分数のたし算・ひき算」・・・・・>わり・分・小・整「割合」

だったものが、

「分数のたし算・ひき算」わり・分・小・整・・・・・>「割合」

に変更。

「わり・分・小・整」には「分数倍」という観念が出てくるので、これを使う「割合」にこれまで併設されていたのであろう。

それが、「分数のたし算・ひき算」の直後に学習することになったわけで。

実は10年ほど前まではこの形だったのが、今回の改訂でもとに戻っただけです。

分数の計算から単元を隔てて、「割合」の直前にこの「わり・分・小・整」を学習するのは、算数が得意な子・自分で勉強できる子ならいい。

ただ正直、苦手な子には、ようやく慣れてきた分数の観念をまた一から思い出させる作業。

ここ10年ほどずっと やりにくさを感じていた部分でした。

子どもたちの発達段階を考えると、今回改訂の単元の並びのほうがより効率的な気はします。

次に小6ですが、単元の移動は小5よりも多く、教材の作り直しはけっこう大変な作業ですが。

気になったのは割合を表す分数の小単元。

従来は、

「分数×分数」➡割合を表す分数➡「分数÷分数」

だったものが、

「分数×分数」➡「分数÷分数」➡割合を表す分数

と、並び順が変更になっています。

こちらは大改訂から4年、わずか1回の改訂でもとの並びに戻る。(個人的には予想の範疇でした。)

そもそも「分数×分数」の直後では、分数の計算の練度がまったく足りません。

計算の単元ばかりで単調にならないよう、割合を表す分数を挟んだともとれるが、子どもの定着の度合いを考えれば尚早。

(好き勝手言ってますが、あくまで主観です。)

”分数のわり算”の計算は、結局のところ”分数のかけ算”を利用して計算します。

わり算の修了時点でかけ算のスキルもようやく完成されたものになるわけで。

料理において、たとえばパンや餃子の生地を作る工程のなかに”寝かせる”という表現がよく出てきますが。

息する感覚で計算を使いこなすレベルまで子どもが到達するには、演習量だけではなく、…そう、”寝かせる”期間も必要なんです。

個人の肌感ではありますが、そこまで待つのがやはり妥当でしょう。

細かい部分ですが、小5・6まとめて、

いちばん気になったのは、答えを書く際に、「,」(コンマ)の代わりに「、」(読点)を使うようになっています。

たとえば、アとイが答えのとき、従来は「ア,イ」と表していたものが、「ア、イ」となっていました。

実は、問題文に使われていた「,」(コンマ)は、前回改定ですでに「、」(読点)に差し替えられています。

そもそもコンマを使うこと自体 これまで違和感があったので、この部分(前回改定)の変更には納得です。

ただ、問題文ではなく 答えを書く際は、
小数点(.)と混同することのないよう これまで「,」(コンマ)を使っているのだと解釈していたが、読点なんか使ってホントに大丈夫なんだろうか?…というのが率直な感想です。

答えが記号ならまだしも、小数の答えを並べて書くとき、雑に書かれた文字の、読点と小数点を見分けるのはかなり困難だと思うのだが。

コンマは向きが違うから見分けられていたところを、たとえば読点を使って、「24、28、32」みたいに書かれてしまったなら、いったいどうやって判断・子どもに指摘をするのでしょう?

(実際、小数点を読点「、」のように書く子は多いのです。)

ここを深掘りしてしまうとキリがないので、次回にまわすことにします。

あとは、「順々に調べて」「場合をあげて調べて」「同じものに目をつけて」などの単元名が、「見方・考え方を深めよう」にまとめられてしまったのはどうなんだろう?

小単元名として残っているものもいくつかありますが。

特に挙げると、小6の「場合をあげて調べて」という単元名を「子ども会の準備」にしてしまうのはさすがにネーミングセンスを疑いたくなる。

単元を見ただけで内容をイメージできるように、という意図は解らなくもないですが・・・。

小6の教材の手直しはまだ現在進行形で作業中です。

その作業の休憩がてら このブログを書いているわけで。

ここまでいろいろとお話ししましたが、毎回の教科書の改訂は、面倒に思うどころか わりと心待ちにしているのが実は本音です。

永く塾の講師をやっていると、改変の意図を推し量るのも段々と楽しみのひとつになってきたりして。

ともあれ、教科書の改訂には1教科あたり数十名(少なくとも30名とか50名くらいの規模)の監修のかたが関わっていると聞きます。

現職の教員、大学の教授、などなど。

ウチの父も昔、そこに名を連ねていたのはココだけの余計な話として。

それらの方がたが、毎4年の歳月をかけ、子どもがより意欲的に取り組める教材を目指し 頭を捻っているわけです。

願わくば 大学教授や学者さんよりも、子どもたちの心の深層・繊細な部分をじかに推し量ることのできるという意味で、現職の小学校の先生がたが中心となって、教科書の作成を進めてほしいところではあります。(たぶんそうなんだとは思いますが。)

では今回のブログはこのあたりで。

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